暗い暗い夜が風呂敷(ふろしき)のような影をひろげて野原や森を包みにやって来ましたが、雪はあまり白いので、包んでも包んでも白く浮びあがっていました。親子の銀狐は洞穴から出ました。子供の方はお母さんのお腹(なか)の下へはいりこんで、そこからまんまるな眼をぱちぱちさせながら、あっちやこっちを見ながら歩いて行きました。
やがて、行手(ゆくて)にぽっつりあかりが一つ見え始めました。それを子供の狐が見つけて、「母ちゃん、お星さまは、あんな低いところにも落ちてるのねえ」とききました。「あれはお星さまじゃないのよ」と言って、その時母さん狐の足はすくんでしまいました。